新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 5 月現在)

新しい Outlook についてよく聞かれる質問として、「新しい Outlook は Microsoft 365 Apps の Outlook を置き換えるのか? 置き換えるとしたらいつになるのか?」というものがあります。
これに対する回答は 3/7 に New Outlook for Windows: A Guide to Product Availability – Microsoft Community Hub としてブログで公開されました。

このブログ記事の内容としては「置き換えるが、現時点ではいつになるのか決まっておらず、数年先になる」というのが結論になります。
しかし、段階的に行われる置き換えについて説明されているので、記事の内容をちょっと抜粋してみます。

この記事によれば、置き換えは以下の 3 つのフェーズで行われます。

Opt In: 既定は従来の Outlook となり、スイッチで新しい Outlook に切り替わる
Opt Out: 既定は新しい Outlook となり、スイッチで従来の Outlook に切り替えられる
Cutover: 新しい Outlook への置き換えが完了し、従来の Outlook への切り替えスイッチがなくなる

これらのフェーズのスケジュールについては上記の記事にある以下の図に概要が示されています。

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							New Outlook for Windows: A Guide to Product Availability

そして、現在は Opt In のフェーズであり、スイッチにより切り替えることで新しい Outlook が使用できるようになります。
ただ、厄介なのは、新しい Outlook は Windows に付属のメールとカレンダー アプリも置き換えるものとなっており、こちらはすでに Cutover フェーズにあるということです。
そのため、Windows 11 の 23H2 をインストールすると、スイッチによる切り替えをしなくても、スタート メニューには新しい Outlook がメールとカレンダーの代わりに表示されている状態となりますが、これは従来の Outlook の置き換えを意味しているものではありません。

次の Opt Out フェーズがいつになるのかについては現時点で決まっておらず、遅くともこのフェーズに入る 12 カ月前にはスケジュールが公表されることになっています。
現時点 (2024 年 5 月) でそのようなアナウンスはありませんので、Opt Out は 2025 年 5 月以降は確定ということになります。

さらに、Cutover フェーズについても 12 カ月前にスケジュールが公表されることになっており、それは Opt out よりも後になるようなので、2026 年 5 月以降ということになるのでしょう。
なお、Cutover フェーズを迎えても、2029 年までは従来の Outlook のサポートは継続されるということなので、従来の Outlook からの移行期間は最短でも 5 年はあるということになります。

また、正式リリース (General Availability) の時期についてですが、上記の図では Opt out の前にリリースされるということになっています。
つまり、正式リリースされたら従来の Outlook への置き換えが行われるのではなく、正式リリース後も従来の Outlook と併用期間がしばらく続くということになります。

新しい Outlook と従来の Outlook の機能比較が New and classic Outlook for Windows feature comparison – Microsoft サポート として公開されましたが、新しい Outlook で使えないにもかかわらずこのページに記載されていない機能というのも多々あるので、置き換えにはまだまだ時間がかかるのでしょう。

Windows Update を実行すると新しい Outlook for Windows が自動でインストールされる

最近、Windows Update を実行したら新しい Outlook for Windows が勝手にインストールされた、というような話を聞きます。
これは、Windows 10/11 の 23H2 以降で Windows メールとカレンダーが新しい Outlook for Windows に置き換えられるためです。
このことは、新しい Outlook for Windows の展開の概要 – Deploy Office | Microsoft Learn に以下の通り記載されています。

23H2 以降の Windows ビルドでは、2024 年末までにプレインストール済みのメール アプリと予定表アプリが置き換えられるため、新しい Outlook アプリがすべてのユーザーにプレインストールされます。

この動作を事前に無効化してインストールされないようにする方法は用意されていないため、管理者がユーザーに新しい Outlook for Windows を使わせたくないということなのであれば、23H2 のインストール後に新しい Outlook for Windows を削除する必要があります。

削除方法は以下の通りです。

  1. PowerShell を管理者権限で起動します。
  2. 以下のコマンドを実行します。

    Remove-AppxProvisionedPackage -AllUsers -Online -PackageName (Get-AppxPackage Microsoft.OutlookForWindows).PackageFullName

新しい Outlook for Windows で MSG ファイルや EML ファイルを開く方法

Office 製品の Outlook では msg ファイルや eml ファイルを開くことができましたが、新しい Outlook for Windows をインストールしても、msg ファイルや eml ファイルに関連付けられたアプリとして表示されません。

そのため、これらのファイルをダブルクリックにより新しい Outlook for Windows で開くことはできないのですが、一手間かけることで開くことができます。
手順は以下の通りです。

  1. [新規メール] をクリックし、新しいメールを作成する
  2. msg/eml ファイルをメールの本文にドラッグし、[ファイルを添付] にドロップする
  3. 添付した msg/eml ファイルをダブルクリックする

そのうちこのようなことをしなくても開けるようになると思いますが、それまではこれで対処できますね。

Outlook の Copilot と新しい Outlook for Windows

いろいろと話題になっている Microsoft 365 の AI を使用した Copilot が 11 月 1 日から企業向けに提供され始めました。
Outlook の Copilot も提供されましたが、現時点では新しい Outlook for Windows (以下 New Outlook) と Outlook on the Web で使用可能なものの、Microsoft 365 Apps の Outlook (以下 Classic Outlook) では使用できません。

そのため、これを機会に New Outlook に切り替えようと思われる方もいるかもしれません。
しかし、New Outlook を組織で使う場合、以下のような点に注意が必要です。

1. 有償サポートがない

New Outlook はコンシューマー向けとしては正式公開となっていますが、企業向けとしてはまだプレビューのままであり、有償サポート窓口ではサポートが受け付けられません。
今のところ、何か問題が発生したら New Outlook の [ヘルプ]-[サポート]-[サポートへの問い合わせ] から問い合わせするしかない状況です。

2. COM/VSTO アドインが使用できない

New Outlook では COM アドイン (VSTO アドイン) が使用できません。
社内で誤送信防止やウイルススキャン、添付ファイルの暗号化などのために COM アドインを使用をしている場合、それらが使えなくなることになります。
なお、New Outlook で COM アドインがサポートされる予定はありません。

3. マクロや Outlook Object Model が使用できない

Outlook のマクロは COM アドインとして実装されていますので、COM アドインが使えないということはマクロも使用できません。
また、Outlook Object Model の提供もされていないので、他の Office アドインからマクロで Outlook を呼び出すと、New Outlook ではなく Classic Outlook が起動されることになります。

4. クライアント ルールが使用できない

New Outlook では クライアント ルールは使用できません。
そのため、クライアント ルールでなければ実装できないような条件やアクションは設定できません。
なお、送信ルールはすべてクライアント ルールとなるため、New Outlook では遅延配信などを含む送信ルールが一切使えないことになります。

5. PST が使用できない

現時点では、New Outlook は PST をサポートしていません。
新しい Outlook for Windows の概要 ではもうすぐリリースされるとあるのですが、今のところロードマップに具体的なリリース予定は掲載されていません。

6. グループポリシーが使用できない

Classic Outlook ではグループポリシーを使用して細かい制御 (特定機能の無効化や特定の設定の強制など) ができましたが、New Outlook ではグループポリシーの設定がありません。
Exchange Online 側で制御できる Outlook on the Web の設定については New Outlook でも有効ですが、それ以外のことはほとんどできません。

7. カスタム フォームが使用できない

最近はほとんど使われていないかもしれませんが、Classic Outlook にはカスタム フォームといってメールや予定アイテムの UI をユーザーが作り変える機能があります。
これを使用しているような場合、New Outlook では使えなくなります。

8. RSS フィードや SharePoint 同期が使用できない

これも使用されている人は少数派かもしれませんが、RSS フィードや SharePoint との同期なども使用できません。
SharePoint で連絡先や予定表を作成してチームで共有しているというような場合、Outlook でアドレス帳として使用したり、自分の予定表と SharePoint の予定表を重ねて表示するというようなことができなくなります。

上記以外にも細かな違いは多々あり、New Outlook を Classic Outlook の新しいバージョンと思って使用すると大混乱に陥る可能性があります。
もし、Copilot を使用したいというだけで New Outlook にしようと考えているのであれば、来年の 3 月に予定されている Classic Outlook 向けの Copilot の提供を待ったほうが良いでしょう。

新しい Outlook for Windows と COM/VSTO アドイン

最新チャネルの Outlook でも「新しい Outlook を試す」というトグルが表示されるようになってから、「既存の COM/VSTO アドインがいつまで使えるのか」という心配をされる人が増えてきているようです。

確かに「新しい Outlook for Windows」では COM アドインや VSTO アドインは使用できず、サポートされる予定もありません。
COM アドインや VSTO アドインは Outlook Object Model を使用して動作するのですが、新しい Outlook  は Office に含まれる Outlook とアーキテクチャが根本的に異なるので、Outlook Object Model 自体をサポートできないためでしょう。

ただ、そうなると新しい Outlook for Windows の正式リリースにより Office に含まれる Outlook が新しい Outlook に置き換えられた場合、VBScript や PowerShell、RPA などで Outlook Object Model により自動化しているようなシステムも使用できなくなるということを意味します。

そんなことになったら大問題ですが、実際にはそのようなことは起こらないでしょう。
公式の情報は見つけられませんでしたが、以下のページでは当時「Project Monarch」と呼ばれていた新しい Outlook が既存の Windows 10/11 の「メールとカレンダー」アプリを置き換えるものとなり、Office に含まれる Outlook が置き換えられるのは当分先の話ということです。

Microsoft is building a new Outlook app for Windows and Mac powered by the web | Windows Central

したがって、既存の COM アドインや VSTO アドインがいつまで使えるのかという質問については、まだ 4-5 年は使えると思ってよいでしょう。

一方、今後新たにアドインを作るなら、最初から Web アドインとしての実装を検討してもよいかもしれません。
Web アドインとして実装すれば、Windows だけでなく、Mac やモバイルの Outlook でも動作し、ターゲットが広がりますので。

6/22 追記:

以下の Microsoft 365 Insider のブログ記事で、新しい Outlook for Windows が Windows 11 のメールとカレンダーの置き換えになることが正式に発表になりました。

Starting to support third-party accounts in New Outlook for Windows Preview (microsoft365.com)

新しい Outlook for Windows の続報

先週、MC376710 の「新しい Outlook for Windows」についての説明を投稿しましたが、5/17 から Insider Fast という Office のベータ チャネルから新しい Outlook for Windows (以降、New Outlook とします) のインストールが可能となり、Microsoft のサポートページやブログでも New Outlook についての情報がリリースされました。

The new Outlook for Windows helps you be more productive and in control of your inbox では、New Outlook で使用可能な以下のような機能についてスクリーン ショット付きで公開されています。

  • Microsoft Loop
  • メンションによるファイル検索
  • メッセージのピン止め
  • To Do リストの統合
  • 予定表のボード ビュー
  • ハイブリッド RSVP
  • メールのスヌーズ

ただ、実のところ New Outlook で使用可能な機能の大半は Outlook on the Web (Web 版 Outlook) でも使える機能だったりします。

Windowsの新しいOutlookの概要では、現在の Outlook と Outlook on the Web、New Outlook の機能比較があります。
比較表の最初の部分では現在の Outlook で使えない機能が数多くあるように見えますが、後半では以下のような機能が使用できないことがわかります。

  • Outlook.com アカウント
  • サードパーティのアカウント
  • 複数アカウントのサポート
  • 代理人機能
  • 共有メールボックス
  • オフライン動作
  • Web アドイン
  • COM アドイン

このうち、COM アドイン以外は近日公開予定となっているのですが、Things to know about the new Outlook for Windowsで使用できない機能の開発状況も記載されており、POP のサポートや PST ファイルのアクセス、代理人、共有メールボックスなどはまだ開発が始まっていないようです。
また、COM アドインがサポートされないということは、おそらく Outlook オブジェクト モデルが使用できないということであり、VBA マクロもサポートされないということになるのでしょう。

この状況だと、本格的に展開可能になるのはまだまだ先かもしれません。