Outlook の代理人機能の仕組み


Outlook を Exchange サーバー環境で使用している場合、代理人という機能が使用できます。
代理人とは、たとえばアシスタントが役員に代わってスケジュールを管理するというように、本人に代わって処理できる権限を与えられた人のことで、具体的には以下のような権限のいくつかまたはすべてを代理人に与えることができます。

  • 予定表フォルダを開く
  • 予定表フォルダに直接アイテムを作成する
  • 仕事フォルダを開く
  • 仕事フォルダに直接アイテムを作成する
  • 会議出席依頼のコピーを受信する
  • 会議出席依頼に代わりに返答する
  • 代理でメッセージを送信する
  • 空き時間情報を代理で公開する

そして、これらは Outlookの [ツール]-[オプション] の [代理人] タブでまとめて設定できるため、表面上はシンプルな設定に見えます。

しかし、実際には複数の箇所にさまざまな設定が個別に行われています。この記事では、代理人の設定がどのように行われるかを解説します。

メールボックスで行われる設定

あるメールボックスでほかのユーザーに代理人の権限を与えた場合、既定では以下のような設定が行われます。

  1. 予定表フォルダに対する読み込み・書き込み権限
  2. 仕事フォルダに対する読み込み・書き込み権限
  3. メールボックスストアのルートにある Freebusy Data フォルダに対する読み込み・書き込み権限
  4. Freebusy Data フォルダの LocalFreeBusy メッセージのプロパティ
  5. 代理人に会議出席依頼を転送するルール

このうち 1. と 2. についてはフォルダのアクセス権タブにより確認が可能です。
3. の Freebusy Data フォルダに対する権限については Outlook からは確認ができません。しかし、Outlook で予定表に権限を与えると、代理人でなくても自動的に Freebusy Data フォルダに対する権限が与えられます。
4. の LocalFreeBusy メッセージのプロパティについては [代理人] タブで設定を行ったユーザーのエントリ ID や [代理人に非公開に設定したアイテムへのアクセスを許可する] のフラグなどの情報が保存されます。そのため、何らかの理由で LocalFreeBusy メッセージが削除されたような場合には、代理人の設定が失われる可能性があります。たとえば、サービスパックが適用されていない Outlook 2002 で /cleanfreebusy スイッチにより空き時間情報のリセットを行うと、代理人の設定が失われます。(http://support.microsoft.com/kb/311823)
5. のルールは Outlook の [仕分けルールと通知] などでは確認できない隠しルールとなっています。そのため、Outlook の [代理人] タブを使わずに代理人に関する情報を削除した場合、ルールだけが残って意図せず会議出席依頼が転送され続ける可能性があります。

Active Directory で行われる設定

Active Directory には [代理人として送信する権限] に関する情報が追加されます。Exchange Server 2007 では Exchange 管理コンソールのメールボックスの [代理人として送信するアクセス許可の管理]、Exchange Server 2003 では [Active Directory ユーザーとコンピュータ] のユーザーのプロパティの [Exchange 全般]-[配信オプション] にある [代理送信] で設定可能です。
この設定はあくまでも代理人として送信する権限に関するものであり、メールボックスで行われる設定とは連携していません。そのため、退職した人のメールボックスの代理人を削除するつもりで、Active Directory の代理人設定を削除しても、フォルダに対するアクセス権限や会議出席依頼の転送ルールは残ったままとなります。

まとめ

以上のように、代理人の設定はさまざまなところに格納されており、それらを一括で変更するような API などは用意されていません。PFDAVADMIN や ADSI などを使用してアクセス権限などを設定することは可能ですが、転送ルールの設定なども考えると、プログラムで設定するのは非常に難しいと考えられます。
したがって、代理人の設定・解除は Outlook のユーザー インターフェイスを使って行うべきといえます。

Outlook の代理人機能の仕組み」への6件のフィードバック

  1. お世話になります。このブログ記事にかかれております、代理人設定の解除について、大変困っております。あるユーザーのOutlookにおいて代理人の設定がされていたのですが、代理人として設定されていたユーザーが退社し、そのユーザーのアカウントをActive Directoryから削除してしまったため、上記で書かれております「5. 代理人に会議出席依頼を転送するルール」(隠しルール)が残ってしまい、依頼を送るたびに存在しないアカウントへ転送され、そのエラーメッセージが返ってくるという事象が発生しております。上記ブログで書かれているように、代理人の設定・解除はOutlookのユーザーインターフェイスを使って行うべきかと思いますが、このように問題になってしまった場合には、どのように解決したらいいのか、教えていただけないでしょうか?こんなことをここで質問していいものかわかりませんが、ご教授頂けましたら幸いです。どうぞ宜しくお願いいたします。

  2. To Ken さんOutlook のバージョンはいくつでしょうか?Outlook 2003 であれば、SP3 または http://support.microsoft.com/kb/912007/ の修正プログラムを適用することで、AD から削除されたユーザーが表示されるようになります。(詳細は http://support.microsoft.com/kb/909638/ja もご覧ください。)Outlook 2002 以前になると、修正プログラムもなく /cleanrules オプションもないため、MFCMapi というツールを使って自動仕分けのルールを削除する必要があります。手順は http://support.microsoft.com/kb/924297/ja にあります。このページでは Outlook 2003 と記載がありますが、実際には Outlook 2002 以前でアクセスしているメールボックスでも同じ方法が使えます。

  3. Millefeuil​leさん、お忙しいところご返信ありがとうございました。弊社の環境ではOutlook2003のSP2を使用しておりましたので、SP3を適用することで解決できそうだとわかりました。ですが、社内スタンダードがSP2のままとなっておりますので、社内協議の結果、どうするか決定する予定です。貴重なアドバイス、本当にありがとうございました。今後ともこのブログ、参考とさせていただきます。

  4. Millefeuilleさん以前、リソースについて質問させていただきましたIsamuです。その節は大変ありがとうございました。別件で困っていたところ、またOutlook研究所に辿り着きましたので質問させてください。事象としては、下のKenさんとほぼ同様で・Outlookで代理人を設定した・代理人として設定されていたアカウントをADで削除した・会議出席依頼に対してエラーメッセージが返ってしまうという状況です。そこで、Outlookのユーザインタフェースから代理人の設定を削除しようとしているのですが、以下の表示がでて代理人の設定を削除できません。———————————–「代理人」タブの設定は正しく保存されませんでした。代理人リストをアクティブにできません。この操作をオブジェクトに対して実行するのに必要なアクセス権がありません。———————————–Outlook2003 SP3を利用しておりますので削除できてもよさそうなものなのですが・・・何か解決方法や、チェックすべき項目などがありましたらご教授いただけないでしょうか?申し訳ありませんがご回答いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

  5. To Isamu さん代理人の設定が削除できない問題については、以下の KB の現象に合致していると考えられます。文書番号: 913807タイトル: Outlook 2003 更新プログラム (2006 年 3 月 14 日) についてURL: http://support.microsoft.com/kb/913807/このドキュメントに「Outlook 2003 Service Pack 2 の既知の問題」という項目があり、代理人の設定が行なえない現象の原因と回避策が記載されています。また、以下の KB にはこのエラーを表示させない修正についての情報もあります。文書番号: 946208タイトル: Outlook 2003 で代理人を追加するときにエラー メッセージ:"The 代理人設定が正しく保存されません"URL: http://support.microsoft.com/kb/946208/こちらの方法は、修正プログラムを適用してからレジストリ設定を行なうことで、エラーを無視するようにします。Active Directory 側のアクセス権の設定が困難である場合は、こちらの方法をお試しください。

  6. Millefeuil​leさんコメントありがとうございました。そして・・・ Exchangeサーバのセキュリティタブから、SELFの「個人情報の書き込み」を許可したところOutlookからばっちり削除できるようになりました!アドバイス、大変ありがとうございました。ドメインのAdministratorでOutlookの設定を行って代理人の削除を試していたので権限としては問題がないかな、と思っていたのですが、、、いろいろと難しいですね。2回目になりますが、本当にお助けいただきましてありがとうございました。今後も参考にさせていただきます。

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